【レビュー】高級感、書き味共に最強の国産万年筆『PILOT カスタム 一位の木』
25PILOTの高級万年筆『カスタム 一位の木』を買ってみました!
PILOTの高級万年筆『カスタム 一位の木』を買ってみました!
“万年筆”自体の知名度はかなりあるものの、学生から年配の人まであまり使われていないのが現状です。「万年筆は高い」や「自分はそんなに字がうまくない」、「そもそも万年筆自体に興味がない」という人はたくさんいるでしょう。
たしかに万年筆は一般的な筆記用具であるボールペンやシャーペンに比べて高価なものです。しかし万年筆はその名前の通り、大切に扱ってさえいれば万年使い続けられる不思議な道具です。それに、万年筆はボールペンにはない楽しみ方があります。見て楽しむ、書いて楽しむ、インク選びで楽しむ、調整で楽しむ…。“書く”といった点ではボールペンと全く同じ文房具ですが、それ以外の点では全く異なる文房具です。
過去に僕は“万年筆のすすめ”の記事を書いています。万年筆のほとんどは1万円を超える値段設定になっていますが、3000円程度で買える製品も存在します。ほんの少しでも興味があれば、ぜひその記事をご覧下さい。
今回購入したのは、“PILOT”による万年筆『カスタム一位の木』です。
“PILOT(パイロット)”は、『ドクターグリップ』や『フリクションボール』などといった文房具で有名ですが、万年筆の分野に関しては世界レベルで有名なメーカーです。
万年筆は世界中のメーカーからリリースされていますが、中でも国産メーカーの万年筆は非常に品質が高いことで知られています。今回は、国産メーカーの中でも特に愛用者が多いPILOTの万年筆を買ってみました。
PILOTの万年筆には『カスタム』と呼ばれるシリーズ製品が存在します。現在販売されている『カスタム』製品は
と、豊富な種類が存在します。
この中で特に人気の製品が『カスタム 743』と『カスタム845』です。どちらも高価な万年筆ではありますが、最高峰の書き味であると色々なところで耳にしてきました。
今回購入した『カスタム 一位の木』は、『カスタム 845』とほとんど変わらない製品です。唯一違う点は軸(持つ部分)にあり、『カスタム 845』は漆塗り仕上げのエボナイトに対し、『カスタム 一位の木』は“イチイ”と呼ばれる木を使用しています。
別名アララギ、オンコ(アイヌ語)。北海道から九州にかけて山地に自生し、特に北海道・東北地方の寒冷地に群生する常緑針葉樹。紅褐色の心材は、年輪の幅が狭く緻密。滑らかで光沢があり美しい特徴から、神社仏閣の内装、工芸品や机の天板などに用いられます。「一位」の名は、献上用の笏(しゃく)をこの木で作ったところ、美しく質が高かったので最高位である「正一位」を授かったことに由来すると言われています。また、その名から縁起木として学業成就や出世、開業などに使われます。
カスタム 一位の木 - PILOT より抜粋
つまり、内部的な構造は『カスタム 845』と変わらず、軸に“イチイ”を利用した木軸万年筆が『カスタム 一位の木』というわけです。
もともと“いかにも万年筆らしいデザインの万年筆”が好みでない自分にとって、国産万年筆のデザインはあまり好みではありませんでした。しかし、抜群の品質をもつ国産万年筆をいつか手に入れたい…。ある日、PILOTの商品紹介ページを見たところ、この『一位の木』の木軸デザインがなかなか良かったので、買ってみたというわけです。
『一位の木』の字幅は F(細字)・M(中字) の2種類。今まで僕は海外製万年筆を購入してきましたが、海外の万年筆と日本の万年筆の字幅表記には大きな差があります。“細字”として知られている F という字幅ですが、海外の F は日本の M(中字)に相当するほど太いです。これは、英字は日本字(漢字)ほど細かい線を必要としないからです。今回は海外製万年筆では味わえない細字を体験してみたかったので、『一位の木』の F(細字)を購入してみました。
ちなみに『一位の木』の定価は 52,500円 で、万年筆の中では中級〜高級万年筆に値します。
それでは早速、開封の儀といきましょう。段ボールを開封すると姿を現したのは白い箱でした。このパッケージの時点で高級感がヤバイです。
白い箱を開封すると、中から出てきたのは黒い箱でした。この黒い箱もヤバイ高級感を漂わせています。
この黒い箱を開けると…。
金色に輝いたPILOTのロゴと共に、白い布地に包まれた万年筆が姿を見せました。
黒い箱の内側には黒い布が敷かれており、それがまた更なる高級感を漂わせています。
『一位の木』に付属しているものは以下の通り。
ちなみにですが、PILOT製品は購入してから1週間以内であればペン先の調整(字幅変更を含む)は無料で引き受けてくれるそうです。
付属しているペンケースは印傳屋のペンケースのようです。付属のものにしては品質も雰囲気も素晴らしく、長く使えそうなヨカン。
『一位の木』は、木軸版『カスタム 845』です。使用している木材は“イチイ”。もともと万年筆は、全く同じものを製造することは難しいと言われていますが、木軸万年筆の場合は1つ1つ模様が異なるため、手に入れた万年筆は、世界でただ一つしかない万年筆となります。また、使えば使うほどツヤが出て味が出るため、長期間使うことで愛着と共に更なる美しさも得られます。
軸の太さは結構太く、キャップの部分は更に太くなっています。本体、キャップ共に金色の装飾があるため、一目で高級万年筆だと分かります。
個人的には、キャップのクリップ部分にある丸い玉は古くささを感じてしまいますが、去年末にリリースされた『カスタム 槐(えんじゅ)』は玉のクリップから変更されています。
『一位の木』のキャップ部分には、“★★★ PILOT JAPAN ★★★ CUSTOM ART CRAFT”と刻印されています。
写真だとあまり『一位の木』の色具合が分からないと思うので、『Photoshop』で実際の色に近い色に編集してみたものが上の画像です。
万年筆の木軸を採用するのは非常に難しいと言われています。なぜならば、製造時に木にひび割れが生じてしまう可能性が高いからです。『一位の木』よりも安価な同社の『カスタム カエデ』は、木材に樹脂(プラスチック)含浸させる特殊な加工を施しています。それに対し『一位の木』は、木材を水蒸気で加熱してプレス圧縮させる圧密という加工を施しています。圧密が施された『一位の木』は、木100%の製品ということになります。
実際に『一位の木』の重量を量ってみると 32g と、万年筆には最適な重量感がありました。以前僕が使用していた『Lamy ステュディオ』と比べると、かなり軽く感じてしまうかもしれません。
さわり心地は「素晴らしい」の一言です。木軸のせいかサラサラしたさわり心地で、これがまたクセになりそうです。首軸(指の腹が触れる部分)は樹脂製であるため、書いている途中に手元が滑ってしまうことはないでしょう。
僕が以前使用していた『Lamy ステュディオ』や同社のエントリーモデルである『コクーン』は、押し込むとカチッと音が鳴る勘合式のキャップでしたが、『一位の木』のキャップはねじ式となっています。
『一位の木』のニブは、15号18金となっています。
○号というのは、ニブの大きさを表しています。3、5、10、15と数字が大きくなるにつれてニブが大きくなるので、15号はとても大きい部類です。ニブが大きければ大きいほど良いというわけではありませんが、高級感はありますよね!!!!!!
○金というのは、金の配合率を表していて、14、18、22,24と数字が大きくなるにつれて文字を書いたときにニブ(ペン先)がしなり、柔らかい印象を持ちます。先ほどと同様、柔らかければ柔らかいほど良いわけではありませんが、高級感はありますよね!!!!!!!!
『一位の木』のニブはとても高級感があります。15号というニブの大きさも要因の1つではありますが、何より格好良いのは、そのバイカラー仕様でしょう。ニブだけを見ても「これは高級万年筆だ!」と分かってしまうほどです。
手持ちの万年筆のニブを比較してみました。手前から『一位の木』、LAMYの『ステュディオ パラジュームコート』、PILOTの『コクーン』です。『ステュディオ』はもともと小さなニブが特徴ではありますが、『一位の木』とかなりの差があることが分かります。
ニブ(ペン先)から直接インクを吸引させて補充する場合、どうしてもニブにインクがついてしまいます。万年筆を利用している人の多くはインク補充時に拭き取ると思いますが、ニブが大きければ大きいほどインクは拭き取りやすくなります。
『一位の木』の軸は他の万年筆に比べて一回り太いですが、そのペンの長さも他に比べて長くなっています。上の写真では、左から『一位の木』、LAMYの『ステュディオ パラジュームコート』、PILOTの『コクーン』です。キャップを装着した状態でも、『一位の木』は他の万年筆よりも長いことが分かります。
ほとんどの万年筆は、ペンの後ろにキャップを付けられます。むしろ、キャップを付けて書くことを想定して、本体の重量が設定されている万年筆も少なくありません。
『一位の木』の後ろにキャップを付けると、予想以上に長いものでした。上の写真では『iPhone 5』『ステュディオ』と比較しています。第一印象としては「長すぎるかなぁ」と感じました。
ちなみにですが、後ろにキャップを付けてもカチッとはまらないタイプです。また、この万年筆に限ったことではありませんが、キャップを後ろに付けることで、本体にインクが付着することがあります。特に木軸の『一位の木』は、一度インクが付着してしまうとなかなか落ちなさそうです。結局、インクを付着させたくないという理由で、僕は『一位の木』の後ろにキャップを付けずに使用しています。
先述したとおり、『一位の木』は F(細字)・M(中字)の2種類が用意されていますが、今回僕が購入したのは F(細字)です。
海外産、国産共に EF(極細)・F(細字)・M(中字)などアルファベットで字幅を表記していますが、外国産の万年筆は国産に比べてとても太い傾向にあります。以前購入したLAMYの『ステュディオ』は EF(極細)ですが、国産万年筆の M とほとんど変わらない太さを持っています。
上の写真は外国産 EF 『ステュディオ』(オレンジ色)と、国産 F 『一位の木』の比較写真です。やはり日本語を書く上では国産の F が最高です。最初は「めっちゃ細いのが欲しいからEF欲しい!」と思っていましたが、F でも十分細いのに、EF にしなくて正解でした。
EF(極細)の外国製万年筆であっても、日本の F(細字)より細いものは珍しいほど少ないでしょう。細かい漢字を書いたり、小さな紙に日本語を書くのであれば、迷わず国産の F(細字)をオススメします。特に万年筆を手帳に使うビジネスマンや、ノートに使う学生の人は F(細字)より細いものがベストでしょう。
まだ書き慣れていないせいもあるかもしれませんが、書き味としては若干カリカリ気味です。外国産万年筆にはヌルヌルした書き味があり、英語の筆記体や書き殴りのように素早く書くにはもってこいです。それに対して『一位の木』は、そのような素早く書くような場面での使用は微妙かもしれません。
漢字のように、ハネやトメを意識してゆっくり書く場面では、とても味のある字を書くことができるでしょう。日本語を書くのであれば、その書き味はトリコになるはずです。『一位の木』の独特な香りや紙滑らせたときの感触、外国産万年筆では体感できない細さは素晴らしいものです。
今回購入した『一位の木』は決して安い万年筆ではありませんが、さすが国産と言わざるを得ない素晴らしい品質でした。素晴らしい点を挙げるのであれば
と、まだ書き切れないほどあります。
書き味が素晴らしい高価な万年筆は他にも存在しますが、ここまで素晴らしい手触りと香りの万年筆は見たことがありません。しかし、使用していくと香りは薄れていってしまうのが残念です。その反面、木軸ならではの“ツヤ出し”という楽しみがあります。
記事本文では触れていませんが、プッシュ式の 1.1ml 入るコンバータ(インク吸入器)が付属しています。今まで僕はコンバータの上部を回転させてインクを吸入させるタイプしか使ったことがなかったのですが、プッシュ式のコンバータは途中で空気が入ることもなく、とても便利でした。
『一位の木』の素晴らしい点は山ほどあるので、欠点となるような残念な点を挙げると、
の2点。
『一位の木』は、若干カリカリした書き味を持っています。筆記体のように素早く書く場面では突っかかりを感じるかもしれません。ただこれは、単にまだ書き慣れていないのか、もしくはインクフローの調整が必要な気もしています。キャップの丸い玉が気に入らない点に関しては完全に僕の感想ですが、やっぱり『カスタム 槐』のような長方形形にして欲しかったです。
それ以外の点ではほとんど欠点が見当たりませんでした。それほど『カスタム 一位の木』は優れた万年筆です。
『カスタム 一位の木』は定価 52,500円 と高価ですが、Amazon.co.jp では 35,000円 と、30%オフの価格で販売されています。
文房具としてはとても高い部類に入りますが、“一生もの”と考えれば悪くない価格設定だと思います。F(細字)という細さはペン習字にも最適な細さなので、「万年筆を買ってからペン字練習を始めよう」と思っている人にもオススメです。
万年筆いいですねー
僕はまだ万年筆デビューしていませんが、この記事と前の万年筆に関する記事を読んでたら欲しくなりました(笑)
今度お金貯めて、Lamy2000とかを買ってみようと思います!
お〜『Lamy 2000』いいですね〜。
万年筆デビュー、お待ちしております!
5万…到底手の届かないシロモノです.
先日のエントリを拝見してからCOCOON買いました!
外国語を勉強するようになったから,筆記量が増え,
"書き疲れ" に悩んでいたので,スラスラ書ける万年筆に大満足です.
インクの使い分けをしたいので,COCOONで揃えてみようかなと思っています.数で勝負!(笑)
定価5万円と聞くと、ちょっと躊躇しちゃいますよね(汗
お、『コクーン』買ったのですね!
2本以上万年筆を持つようになると、インクの楽しみ方が倍増するので数で攻めるのもアリですよ!(笑
此れは、美しい…。
すごいですね。ますます万年筆が欲しくなります。(←近場で打っていない為断念した者)
うん?
もしかしてツイッターで落としたとつぶやいた万年筆って…
『一位の木』のニブはとても格好良いですよ!
僕も、万年筆はオンラインショッピングで済ませちゃうことが多いです。本当は手にとって書くのがベストなのですが…。
あ、もしかして落としたのバレタ…。
ペン先のカリカリ感は使っていくと無くなりますし、
速くヌルヌルした感覚にしたければ万年筆専門店でペン先の調節をしてもらえばいいですよ
あれから時間が経ちますが、やっぱり時間経過で手に馴染んできました。ただやっぱり、FとMの中間が欲しいところ…。
ここまで詳細なレビューをしている素晴らしいサイトはなかなかないですね
また万年筆を購入したらレビューお願いします
ありがとうございます!
更新停止中にいくつかの万年筆を購入したので、更新再開したらレビュー記事をあげてみたいと思います!
同価格帯ですが、ペリカンのM805を使用中です。
EFですが、矢張り漢字を書くには太いです・・(汗)
洋物の方が良いと思っていたのですが、実用面から考えて国産も良いな~。
最終的に僕が行き着いた万年筆は、セーラー製のものになりました(笑)
このPILOTの万年筆よりも安価な万年筆ですが、メインの万年筆として使っているので、この万年筆はほとんど使っていない状態…(汗)
またセーラーの万年筆もレビューしたいと思います!
とても字がきれいだと思ったのですが、何か習われていたのでしょうか。
オハヨウゴザイマス!
TVCMで流れていた某社のボールペン字講座ではありませんが、きれいな字を書くための市販の練習冊子を購入して、練習しています。万年筆を持っていても、字が汚ければ魅力半減しちゃいますからね…精進します!
カスタム一位の木美しいですね。
でも5万はてがとどきません(´;ω;`)ほかに木軸でいい万年筆知っていますか?
木軸の万年筆自体、あまりラインナップがありませんからねぇ…。
安価な木軸万年筆としては、『カスタム カエデ』とかが挙げられますかね。
嵌合式の万年筆でなおかつ派手なキャップの外し方をした場合でもないかぎり、キャップ内にインクが付着していてそれが後ろにキャップをはめた際に軸を汚すというようなことは無いように思うのですが...
パイロットの木軸いいですよね!!!!!
私はシャーペンの「s20」を5年ほど前から愛用していますが、使い込むほど手になじんでツヤテカになっていく感じ・・・最高ですよね!!!!!!!!
そうなんですよー!!
木軸は最強ですな!
僕もレグノとS20持っていますが〜とても良いですね!
参考になりましたありがとうございました
自分はカスタム743(m)と
槐の"(f)を使っていますが、
やはりその中間が欲しいですな笑笑
万年筆ですかー、私もPILOTの「コクーン」と「カスタム ヘリテイジ」とやらの間で迷った末にとりあえず100円のプラチナ万年筆を買ったことがありますねー。また予算ができたら買いたいけど苦学生にはちと辛い・・・。
「これやべえええ!」となる万年筆は、最低でも2万円くらいしますからね…。でもでも、ぜひ出会ってほしいところです!
万年筆イイデスネー!!!
ちなみにこの万年筆
今は廃盤です!