場面に合わせて使いわけよう!デザイナーなら知っておきたい、美しい和文フォント10選
26僕がよく使う、有名な和文フォントを10個ピックアップしてみます。
僕がよく使う、有名な和文フォントを10個ピックアップしてみます。
フォントの紹介の前に、簡単に、フォントを扱う際の注意点をまとめてみます。
どれも基本的なことですが“初心に帰る”という言葉があるように、意外に忘れられがちなことです。
ほとんどの有償フォントではクレジット無表記やロゴに使用した際のロゴの商標登録は許可されていますが、一部の有償フォントは商標登録が許可されていないか、申請の必要があります。また、一部の無償フォントの場合は、クレジット表記が義務付けられている場合もありますので、しっかりと確認してから使いましょう。
フォントはたくさん使えば良いというわけではありません。カラースキームという概念がある通り、使用する色をあらかじめ決めておき、それを使うのがベターです。カラースキームを用意することにより、統一感のある綺麗なデザインに仕上げることができます。フォントの場合も同じで、あらかじめ使用するフォントを決めておきましょう。1つのプロジェクト(作品、Webサイト)で使用するフォントは、多くても3つまでにしておきましょう。ただし、動的に更新される部分(ブログでいうと記事)は、その限りではありません。
そして最も忘れられがちなのが、フォントのトラッキングや字詰めの意識です。フォントのウェイト(太さ)は多くの人が意識して調整していますが、なかなかトラッキングや字詰めは意識されていません。
少しでも意識して調整すると、見違えるような美しさが見えてくる場合もあります。もちろん、これは行間についても言えることです。
『ヒラギノ角ゴ』は、字游工房がデザインした“ヒラギノ”シリーズのうちの角ゴシック体である『ヒラギノ角ゴシック』の1つです。
Apple製品(OSXやiOS)の日本語フォントとして採用されており、「Macの画面は綺麗」と言われる理由の1つでもあります。『ヒラギノ角ゴ』にはW1〜W9までの9段階のウェイトが用意されていますが、『ヒラギノ角ゴ Pro』はW3とW6のみ用意されています。
『ヒラギノ角ゴ』は比較的狭いふところと、空間を広くとっているため、オーソドックスでありながら現代的なフォントという印象を受けます。
視認性が高くバランスが整っているため、見出しや本文など様々な場面で扱える万能向けフォントとも言えます。すべての場合において『ヒラギノ角ゴ』が適しているというわけではありませんが、フォント選びに困ったら、とりあえず『ヒラギノ角ゴ』で代替しておいても問題ありません。
『小塚ゴシック』は、Adobeが作成した角ゴシック体のフォントです。
Adobe製品(『Photoshop』など)には、この『小塚ゴシック』の他に、明朝体の『小塚明朝』が標準で搭載されています。
『小塚ゴシック』はEL、L、R、M、B、Hの6段階のウェイトが用意されており、ELは和文フォントの中でもかなり細い部類に入ります。それに加え、最も太いHでもそこそこの太さを持っているので、『小塚ゴシック』を1セット持っていれば、多くの場面で扱える万能型です。(ただし、こちらは『ヒラギノ』で言う“万能型“ではなく、たくさんのウェイトが揃っているからという“万能型”を指します)
『小塚ゴシック』に関しては賛否両論ありますが、僕の経験的には“嫌い”という人が多いような気がします。僕も『小塚ゴシック』は好きなフォントではなかったりします。
というのも『小塚ゴシック』は非常にクセが強く、“な”や“ぎ”、“さ”、“む”などといった平仮名は、特に不人気です。あまり綺麗とはいえない曲線と、中途半端な重心やふところが目立ちます。また漢字と平仮名のバランスも決して良いとは言えないため、使いどころが難しいというか、とにかく中途半端な印象を受けます。
『小塚ゴシック』の欧文部分には、『Myriad』と呼ばれる評価の高い欧文フォントが採用されています。『Myriad』はApple製品のロゴに採用されているフォントです。ちなみに、『小塚ゴシック』の欧文部分で使われている『Myriad』は、日本語とのバランスを考えて少しサイズが大きくなっています。
『AXIS』は、デザイン情報誌『AXIS』をてがける“アクシス”による角ゴシック体のフォントです。
『AXIS』のウェイトは、UL、EL、L、R、M、B、Hの7段階のウェイトが用意されており、ULは、僕が今まで見てきた和文フォントの中で最も細いものです。
DTPデザイナー向け雑誌のために作られたフォントであるため、可読性はとても高く、それでいて美しい形となっています。大手企業での採用例としては、Appleの日本語サイトの製品キャッチコピー部分や、任天堂のWebサイトで使われています。
和文部分ももちろん美しいのですが、個人的に特に評価したいのが欧文部分。『小塚ゴシック』のように既存の欧文フォントを採用したわけでなく、欧文部分も一から作られています。この欧文部分の美しさに評判があったことから、欧文のみのフォントも販売されています。
『AXIS』は非常にバランスの優れたフォントです。タテヨコどちらのラインも統一された太さを持っているため、最近流行りの“フラットデザイン”とも相性はバッチリです。パステル調のカラーと細字を用いることで、大人の女性をイメージさせる優しい印象を与えることができます。
『AXIS』の最も太いウェイトはHになりますが、他のフォントに比べて、さほど太くありません。しかしながら『AXIS Basic』の細字は高級感がでるのに対し、太字はポップな印象を与えることができます。もちろん、配色や文字の大きさによっては、力強さを与えることもできます。
『AXIS』は値段が高いのが欠点ですが、多くの場面で利用できる優れたフォントだと思います。
『新ゴ』は、日本で有名なフォントメーカーである“モリサワ”による角ゴシック体のフォントです。
先ほど『小塚ゴシック』に賛否両論があると記述しましたが、この『新ゴ』は『小塚ゴシック』を手がけた“小塚昌彦”氏が関わっています。『小塚ゴシック』は非常にクセのある字形であるのに対し、『新ゴ』は『小塚ゴシック』ほどのクセの強いフォントではありません。
『新ゴ』の特徴として挙げられるのは、横幅が長く、止めやはらい、跳ねを極力少なくしているところでしょうか。ひらがなに使われる曲線に関しては、大きく丸みを帯びているため、悪く言えば野暮ったさがあります。
『新ゴ』に用意されているウェイトは、EL、L、R、M、DB、B、H、Uの8種類で、本部から小見出し、大見出しまで幅広く扱えます。
『新ゴ』は文字の大きさが統一されているため、あまり高級感を与えるために使われるフォントではありません。明るさや楽しさをアピールするときに使われる傾向があります。
『見出しゴMB31』は、“モリサワ”による角ゴシック体フォントです。
“見出しゴ”という名前からあるように、見出しでの使用を想定したフォントとなっています。
同社のゴシック体フォントである『新ゴ』や、『ヒラギノ角ゴ』といった他社のゴシック体フォントの最も太いウェイトを見出しフォントとして使う手もあります。
しかし、これらのフォントはウロコを取っ払っているため、少し軽い印象を与えてしまいます。『見出しゴMB31』は始筆にアクセントをもっており、また若干小さめに設計されているため、落ち着いた印象を与えます。
「軽い印象を与えたくない」「しかし見出しにはゴシック体を使いたい」という場合には『見出しゴMB31』は大いに活躍します。
個人的に『見出しゴMB31』は使う機会が多く、高級感を出したいと要望があった場合には、必ずといって良いほど、このフォントを使用しています。
#『ダイゴ』は、
“大日本スクリーン製造”によるゴシック体フォント#です。
『ダイゴ』の一番の特徴は、ゴシック体に明朝体の要素を取り入れたような面白いデザイン。「明朝体を使うとキツい印象を与えてしまう、かといって明朝体のような清潔感がほしい」そういったときに、この『ダイゴ』はよく使います。
『ダイゴ』はW2〜W9までの8段階のウェイトが用意されています。使いどころは限られてきますが、見出しにも本文にも使えるためカタログやパンフレットに最適で、なかなか優秀なフォントだと思います。
『リュウミン』は、“モリサワ”による明朝体フォントで、「明朝体和文フォント」と言えば必ず名前がでてくるほど定番なフォントです。
ラインの先端のシャープさが抑えられているため、明朝体でありながらもやわらかさを持たせており、多くの場面で使える万能な明朝体フォントです。
『リュウミン』には、L、R、M、B、EB、H、EH、Uの8種類のウェイトが用意されており、『新ゴ』と同じく、様々な場面で扱えるフォントです。
ライトノベル小説なんかでは『リュウミン』の使用率は特に多いようですね。
『クレー』は“FONTWORKS”による楷書系硬筆体フォントです。
俗にいう“手書きフォント”に分類されるかもしれませんが、僕が見てきた手書きフォントの中で最も落ち着いた高級感のあるフォントが『クレー』です。
『クレー』にはMとDBしかウェイトがありませんが、ほとんどの場合はこれら2つで事足りるでしょう。とは言え、細いウェイトしか用意されていないため、力強さを求めている場合には向きません。
とても落ち着きがあるため、大人を対象としたデザインに向いています。化粧品などといった女性を対象とした場面では、特に役立つフォントではないでしょうか。
『フォーク』は“モリサワ”によるゴシック体と明朝体の中間に位置する独特なフォントです。
ゴシック体と明朝体の中間とはいえウロコはなく、自然な筆の流れを重視したフォントとなっています。極端な曲線を避けて作られているため、キツいイメージではなくやわらかな印象を与えるフォントです。
用意されているウェイトは、R、M、B、Hの4つ。あまり細いと汚くなってしまうため、最も細いウェイトでもRからとなります。
似たようなフォントとしてはFONTWORKSの“キアロ”や“スキップ”、モトヤの“アポロ”などが挙げられますが、その中で個人的に最も使いやすいと思ったのが『フォーク』です。
明るい場面で使うことが多く、名刺なんかにもピッタリのフォントだと思います。
最後におまけです。
『桜花』は、“白舟書体”のデザイン筆文字シリーズの1つです。デザイン筆文字は自由なスタイルで書かれた筆文字であるため、一般的な用途には向いていませんが、うまく使うと一般的なフォントでは出せない表現が出せます。
この記事の冒頭画像にも『桜花』を使用しています。“白舟書体”のデザイン筆文字シリーズは、“和”を意識したフォントとなっており、フォント名も『忍者』『鯨海酔侯』『桜花』『隼風』などと、和を意識していることがわかります。
『桜花』の製作は女性の書道家が関わっているため、女性らしさあふれるフォントです。フォント名から分かるように特に花びらをイメージさせるデザインであるため、桜や梅、花火などと、四季にあわせて使うと良いでしょう。
はてぶ経由で拝見しました。勉強になります。
どもどもです!
フリーフォントってすごいなー
文字なんかゴシックで全て賄えると思ってた自分を殴りたいです(笑)
中途半端な明朝体フォントを使うくらいならゴシック体を使ったほうが良い場合もありますが、美しい明朝体フォントはとても使いやすくてオシャレですよ!
でも、フリーフォントで明朝体ってあまりみないですねぇ…。
フォントの話は興味があるのですが、分からない事が多いです(汗)
1番分からないのが、有料フォントをインストール(であってる?)した後
インストールしたら使用することが出来ると思いますが、
そのパソコンでブログなどを更新した場合、
そのパソコンでは購入したフォントで書かれてある文字で見ることが出来ると思いますが、
フォントをインストールされていないパソコンだと
有料のフォントで書かれてある文字で見ることは出来ないのでしょうか?
もし出来ないのだと、あまり意味が無い感じがします
そこの所どうなんでしょうか?
どもども!
おっしゃるとおり、サイト側が○○というフォントを表示するように設定していても、クライアント(すなわち閲覧者)が○○というフォントを持っていなければ、そのフォントでサイトを表示することはできません。
そのため、一般ユーザが持っていないフォントを使用した文は画像として保存し、画像として表示するのが一般的になっています。
ただこの方法だと、テキストデータよりも画像データのほうが容量が多くなってしまいますし、『Retinaディスプレイ』のような超高解像度ディスプレイで見たとき、画像はビットマップ形式(ドットの集まり)であるためボケボケになってしまいます。
こう考えるとフォントを買うのは無意味なように感じてしまいますね。
ただWebデザイナーといっても、個人差はありますが、様々なことに手を出さなければいけないことがあります。
たとえばバナー(広告)やロゴといった画像や、場合によってはDTP(印刷物のデザイン)も行うことがあります。
こういった場合にフォントを持っておくと、表現に幅が広がります。
また、最近ではWebフォントやクラウドフォントという、サイト側にフォントをおいておき、閲覧者はそのフォントをダウンロードしてページを表示するといったものが流行りつつあります。
これならば閲覧者がフォントを持っていなくても、サイト管理者の意図したフォントでページを表示させることができます。
ほとんどのWebフォントのサービスは無料ではないので、これも“フォントを購入する”必要があります(月額や年額制です)。
というわけで、Webデザインしか行わないのであれば、合理的に考えてWebフォントが最もオススメできるものだと思います。
しかしWebフォントはあくまで“Webページでの表示までが利用範囲”であり、フォントデータを直接手に入れられるわけではないため、画像などにそのフォントを使うことはできません。
画像だけに綺麗なフォントを使うか、文章だけに綺麗なフォントを使うか…悩みものですね。
もっとも、両方購入するのがベストなんですけれども(汗
ご丁寧に、お返事ありがとうございました。
なんだか、Macの文字が綺麗な理由が分かった気がします
フォントは多く所有してもウェブデザイナーは色々と
難しいかもしれませんが、書籍を扱う人には
頼もしいオプションかもしれませんね。
あのー、AXISは決してDTP雑誌ではないと思いますよ。インダストリアル系のデザイン誌であって、建築もたまに扱われたりします。
また、新ゴに関しても相当癖がある書体で使い所を考える書体の一つです。
(くせが無いとしたら中ゴシックなどが相当)
こういう情報を取り上げていただくのは嬉しいのですが、初心者が勘違いしないようにしっかりとした検証をお願いします。
特にフォント関係は細かく攻撃してくる方もおられるので注意して掲載されたほうがいいと思います。(多分もう攻撃されているかもしれませんが。。。)
これはこれは失礼しました!
『新ゴ』に関しては『小塚ゴシック』と同じ小塚氏が関わっていることから「『小塚ゴシック』ほどクセはないけれども、クセ自体はある」と伝えたかったのですが、誤解を招く表現でした。
修正しました、ご報告ありがとうございます。
小塚とmyriadの比較サンプルのアルファベットの並びがおかしいですよ。
IとJが逆になってます。
修正しました、ご報告ありがとうございます。
楽しく読ませて頂きました!とても勉強になります^^
私も個人的に小塚に苦手意識があったので、そういう方も多いのだと知りなんだか少しホッとしました(笑)
どもども!
『小塚ゴシック』はなかなかクセがありますからね〜、使いドコロが難しいです。
文字好きさんへのコメントについてですが、指摘されてから修正したため、文字好きさんの指摘に誤りはありません。(修正した後コメントしようとしたのですが、サーバの調子が悪く返せませんでした)。
混乱を招かないためにも、該当部分のコメントは伏せさせていただきます。
昨日はサーバの調子が悪く、コメントの返事ができませんでした。
Mactypeとかgdi++とかのフォントレタリングをきれいにするソフトはないのですか。
Windowsの汚い表示からフォントの真の美しさをwindowsでもMac、UNIXやLinuxのように引き出せる便利ソフトなのですが…(反面プログラムとの相性が悪いと余計汚くなりますが)
というか、いもがおおい(笑)
??
フォントのアンチエイリアスがきになるようであれば、カシウスさんが挙げた『gdi++』とかを使えば良いかと思います。
「なぜ、この記事では『gdi++』とかを挙げないのか」という意味であれば、当記事はあくまでフォントを紹介するための記事であって、“フォントを綺麗に見せる方法”の記事ではないからです。質問の主旨が理解できなかったため、念のため、回答させていただきました。
説明と文章が足らず申し訳ありません。
質問というよりも、上記のようなソフトを使用されないのですか?という意味でした。
この記事を読んでふと思ってコメントしてしまっただけなのです。
そうですね〜…僕はMacを使っているのでそのようなアプリは使いません。
ただWindowsを使うこともありますが、アプリケーションとの互換性を考えて、あえて導入を避けていますね。
たしか、新ゴは、教科書やテキスト、携帯電話のフォントなど
幅広く使われてますよね。
AXISは美しいですが、一から作っていることもあって、
値段が高いですよね。まさに、企業用といえますね(笑)
『AXIS』高いですからね〜、その分品質はピカイチですが…。
楽しく拝見させて頂きました。
ゴシックならAXIS、明朝ならリュウミンが一番好きです。
1年くらい購入を考えているのですが、2〜3ウエイトを買うならお勧めのウエイトバランスってどれなんでしょうか?
個人で全ウェイト買うのは厳しいです><
「フォントによる」というのが質問に対する答えとしてベストかと思います。最近はWeb上で好きな文字を試し打ちできるサービスが存在しているので、そちらを使って無難なウェイトを選ぶと良いでしょう。
ただ僕の経験上では、R・M・H(B)の3つが活躍することが多いですね。
凄いな
凄いニキ
非常に噛み砕いてわかりやすく、勉強になりました!
>>本部から
誤植ですかね。